『Doctor-X〜外科医・大門未知子〜』最終回

今クールの民放ドラマで唯一毎週忘れずに見たのがDoctor-Xだった。いわゆる男女関係を巡る話が主体だったSeason2は恋愛ドラマを苦手とする私にとっては苦しいものではあったが、今回のSeason3は医療現場のあり方、医師のあり方を主題とした話の展開だった。内容などは公式HPやサイトを検索すればすぐに見つかると思うので、相変わらず語彙力はないが観た感想をそのまま綴ろうと思う。

まず、Doctor-Xを観る上で個人的な楽しみ方は、台本に書かれているセリフよりも多いと思われるアドリブで共演者の腕を磨いたり、笑わせてNGを出させたりすることで有名な西田敏行さんが出演される度にどれがアドリブなのかを考えながら観ることだ。今回は西田さんの出演が少なかったこともあり、特に高畑淳子さんや勝村政信さんなど他の出演者の方もアドリブなんじゃないかと思えるような面白さがあった。出演者同士のかけ合いのテンポも素晴らしかった。また、今回は原先生が号泣して弁解するシーンや今年の流行語大賞のあのネタを言って部長室から出てくる未知子、十勝議員のうちわらしきものを皆で扇ぐシーンといった時事的で少し皮肉なものも含めたユーモアをいれていたのも、無理矢理流行りを取り入れました感が全くなく純粋に面白かった。もう他のドラマでは使えない気がする。

今回のキーパーソンだった天堂総長は最終回までいわゆる「善者」なのか「悪者」なのかが分からず、目が離せない存在であった。政治家と関係があったのはむしろ医療を政治の一部に取り入れる国家と対立するために政治家を利用していたのだろう。結局最終的には政治家に利用される結末になってしまい、計画は失敗。彼は政治と医療を分離するという医者の未来に対する責任感はあったのかもしれないが、患者と向き合う患者に対する医者ではなかったということを未知子を見続けて最後に気付いた。しかし彼は気付いたことを見て見ぬふりをするのではなく、自分の間違いを認め受け入れた。大抵自分の間違いを認めることは難しい。特にドラマの場合権力者は自身の権力を用いて無かったことにしようとする展開が多いのだが、天堂総長は一般的な権力者の性格を持つ人間ではなかったようである。北大路欣也さんは途中まで白戸家の犬のお父さんのイメージが抜けなかったが、最後まで上品で素敵な総長だった。

Season3はSeason1とSeason2のメンバーがそれぞれ全員集合したものであった。それぞれがそれぞれの状況で未知子を知っている為に実力は認めつつも上の者に対しても言い切ってしまう未知子を一見批判しているように見えるが、最終回のクライマックスである晶さんの手術では皆が今までの欲にまみれた感情を一切取っ払って1人の医師として未知子に協力していたところには感動した。いつもは”御意”が大好きな海老名部長の「天堂総長なんてなんだ。もしものことがあったら俺のクビをかけてもいい」と言い切ったシーン。学園ドラマよりも大人のこういった絆のほうがもっとリアルで私は好きだ。

「私、失敗しないので」この言葉は誇張して意地を張って言われたものではなく、決して見放してはいけない1人の患者の命を預かった責任を再確認し、今からオペを行う自分を奮い立たせる為の言葉であること。例えるならばアスリートがお決まりの独り言を唱えてからコートやグラウンドに入るようなものだろうか。人間は主観や偏見を頼りに判断してしまう生き物だが、患者の抱える問題や過去がどんなものであろうが命を救おうとする未知子は、手術がただの特技や趣味の範囲では収まらないのかもしれない。元々は気が弱く決断の遅いダメダメな医師だった未知子が紛争中のキューバという窮地の中にいた晶さんの下に弟子入りしたのが2人の師弟関係のきっかけなのだが、ここで私が注目したいのは、晶さんが教えたのは術式ではなく手術を行う医師のあり方であるところだ。迷っていたら患者の命が危ない。どんなハプニングが起きたとしても迷っている暇などない。深呼吸をしてその時々に正確な判断をして手を動かすこと。晶さんの全ての言葉が今のスピーディで正確な「失敗しない」未知子を作り上げた。晶さんの手術は未知子の改めて初心にかえる機会になったように思える。医者である自身の予想をはるかに超えて手術を成功させてしまった弟子を敬うわけではなく今まで通りの会話をしていた晶さんと未知子を見て2人の強い信頼性を感じたストーリーだった。

失礼な話だが、当初の私の米倉涼子さんに対する印象はあまり良くなく、何度もひみつのアラシちゃんにゲストで登場していたこともあって、騒がしい人というイメージが強かった。しかしなぜかDoctor-Xシリーズは観ていた。サスペンスなど様々なドラマをかかさず観る祖母が毎週観ていた影響もあるのだろう。目ヂカラの強い米倉さんだが、実は人見知りであることを知って以降米倉さんへの印象が変わった。私も目ヂカラが強く、よく友人に怒っているのかと言われる人間だからだ。他人への警戒心が強く、自分を大きく見せないとなめられてしまう。だからこそなんでもバッサリと言ってしまったり、目立とうとしているのかもしれない。あくまで私の推測に過ぎないが、最近米倉さんがバラエティに出演されているのを観る度にどこかしらシンパシーを感じるのだ。私と同じ8月生まれのしし座のB型であり目ヂカラの強い米倉さん。他にも共通点があるが、”騒がしい”のではなく”サバサバ”した格好良いと思われる米倉さんのような女性に私もなりたいと思った。

同じテレ朝で現在Season13を放送中(第10話は元日に放送らしい)の「相棒」を除けば、大抵シリーズものは3回で終わってしまう。「遺留捜査」もシリーズ3まで。今はスペシャルドラマとして時々放送されている。元々シリーズものは苦手と話されていた米倉さん。きっとDoctor-Xもこの終わり方を考えると続編はしないのだろうと思うと寂しい。また是非とも恋愛や人間関係等を一切気にせず堂々と肝の据わった女性を主人公にしたドラマを制作してほしいと思うと共に、大門未知子を演じ終えたこれからの米倉さんを応援していきたいと思う。